執筆者 レイン オグラ2026年6月15日
kissApubに迷い込んだ夜のこと
雑感 記事
VRChatの検索画面は、少し不思議な場所だ。
ワールドが無数に並んでいて、それぞれにサムネイルがある。意識高い系のもの、ゲーム的なもの、ただ誰かと喋るためだけのもの。ネットコンテンツが常に「最新」「有益」「効率」を競っているのと違って、VRChatのワールドには、そういう圧力があまりない。ただそこにある、という感じがした。
kissApubを選んだのは、本当に理由がない。
サムネイルを見て、なんとなく決めた。それだけだ。その夜、特に目的もなく、時間を持て余していて、一覧から適当に指を動かした結果があのワールドだったというだけのことだ。
ロードが終わって、空間に入った瞬間、少し暗いと思った。曇った夕暮れのような光の中に、バーカウンターがあった。音楽が流れていた。何の音楽かはわからなかったが、うるさくなかった。それだけで、少し居心地がよかった。
HalloTableが光っていた。
今思えば、あれがnu:type.DAOの引き合わせ系ギミックだったということだが、その時はただのインテリアだと思っていた。光るテーブルがある、それだけだ。不思議だとも思わなかった。VRChatには、もっと奇妙なものがいくらでもある。
そこにいたのが、シンプシーだった。
「おー、来たね。音、今日はあったかいよ」
その一言が、妙に記憶に残っている。情報を渡そうとしていないのに、何かが伝わってくる言葉だった。私はライターとして長年、言葉を扱ってきた。だからこそわかる。あの一言には、余計なものが何も入っていなかった。
VRChatの日常がネットと違うのは、その日時にそこにいなければ、その現象に出会えないことだ。私が別の夜に、別のワールドを選んでいたら、この話は存在しない。
それが偶然だったのか、何かに引き寄せられたのかは、今もわからない。
レイン・オグラ

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